ソヴェートロシア 漫画ポスター集

昇曙夢編 南蠻書房
 
十月革命後、ソヴェート・ロシヤに於て漫画とポスターとが少なからざる役割を演じ、以上な発達を遂げたことは世人の等しく認むるところである。中でも革命ポスターと政治及び風俗漫画とは、既にそれだけでもプロレタリヤ革命の最も貴重なる芸術的記念塔を築いているほどで、この事実は未だ嘗て歴史の知らない一つの大きな驚異である。未来の革命史家と芸術史家とは決してこの事実を見過するようなことはなかろうと信ずる。(中略)ロシヤに於いては、ポスターも漫画も共にヒロイックな革命時代の所産として、(中略)芸術的に優れているということが、鑑賞家の興味の中心となっている。その中でも特にモール、アブシーツ、コチェルギン、マヤコーフスキイ等の各種ポスター、デー二の政治漫画、チェリョムイフの宗教漫画、エフィーモフの文壇漫画は、その芸術亭手法に於て最も有名である。
 是等の漫画とポスターとが、革命時代に民衆教化の上に与って力のあったことは言うまでもない。之によって芸術と民衆とは密接に結び付けられ、革命の偉大なる標榜の一つであった芸術の民衆化は立派に実現された。(中略)ロシア国民(中略)自らも絵筆の絵具の助けによって、自己の思想感情を表現するようになった。(中略)本輯に収めた百六十有余種の画は、重としてポロンスキイ編輯の下に三千部の限定版として一九二五年国立出版所から発行された「ロシヤ革命ポスター集」を初め、デーニの「政治漫画集」、漫画雑誌「ベジュボーニク」、其他編者が一九二三年と一九二八年の二回に互ってロシヤを訪問した時に蒐集した資料の中から、特に永久に記念すべき芸術的なものだけを選んだ。(中略)本輯の編集に当り三元社主萩原正徳君が数ヶ月に互る渾身の努力を献て(後略)
一九二九年四月
        編者識